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東京地方裁判所 昭和52年(ワ)10536号・昭52年(ワ)10537号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

一訴外博美が、被告らに対し、原告主張に係る各保険契約(以下「本件各保険契約」という。)の申込みをしたこと、被保険者である訴外博美は、昭和五〇年一一月一九日に死亡したところ、被告らは、その後右訴外人の保険契約申込みを不承諾と、訴外博美の死亡後その旨の意思表示が原告に到達したことは、いずれも当事者間に争いがない。

二ところで、原告は、被告ら保険会社には、本件のように責任遡及条項の付された保険契約の申込みがあり、かつ、保険会社がこれを承諾する前に被保険者の死亡という保険事故の発生した場合において、信義則上、被保険者の身体、健康等に契約の締結を拒否すべき事由がないときは、不承諾の意思表示をなすことは許されず、保険契約は成立したものとみなされるべきである、旨主張するが、仮に保険会社において右のような信義則上の承諾義務が存するとしても、その故をもつて直ちに保険会社の承諾の意思表示があつたものと擬制することはできない。

ところで訴外博美が昭和四六年ころから両手及び背部の湿疹の疾患により訴外医師森部洋一の治療を受けていたことは原告と被告明治生命との間に争いがなく、訴外博美が皮膚疾患のため治療中であつたことは原告と被告三井生命との間に争いがない。前記一及び右の各当事者間に争いのない事実に、<証拠>並びに弁論の全趣旨を総合すると被告らにおいては、一般から保険契約の申込があつた場合には、その申込書、告知書は、医師の検診書等の関係書類を本社に集中した上、その記載等に基づいて個別に審査を行い、あらかじめ定められた部内の査定基準に照らし、右の申込みに対する承諾をするかどうかをその都度決定しているほか危険負担平等の見地に立つて被保険者が何らかの疾患により治療中の場合は契約申込みを承諾しない、との一律的取扱いをなしていること、本件各保険契約申込みの時点において訴外博美の前記湿疹は服薬あるいは治療中であつて、両手及び背部にわたる相当広範囲のものであること、右湿疹は昭和四六年五月ごろから始まつており、本件各保険契約の申込時までの治療期間も既に長期に及んでいること、被告明治生命は告知書及び検診書並びに診査医への照会により訴外博美が契約申込時及び検診の時点において両手及び背部慢性湿疹のため治療中であることを知り、また被告三井生命は診査医師の診査報状により訴外博美が契約申込時皮膚科医師に通院して内服薬を服用中であることを知つたことから、それぞれ前記部内の査定基準に照らして訴外博美の契約申込みをそれぞれ承諾しないこととしたことが認められ、右認定を左右すべき証拠はない。

そして以上までに認定の事実及び前記原告と被告明治生命、同三井生命との間においてそれぞれ争いのない事実を総合すると被告らが訴外博美の本件各保険契約の申込みにつき承諾をしなかつたことをもつて恣意的であるとすることはできず、またそれが信義則に反することであるともいい得ない。

(仙田富士夫 片桐春一 吉田肇)

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